楽天に学ぶ実践的AI戦略と具体的な活用例!業務効率化で生産性向上のヒント

PIVOTで楽天グループ常務執行役員の小林悠輔氏が語るAI戦略の動画を見ました。
その動画によると、「実は、日本の中小企業でAIを活用している割合はたった16%程度」だそうです。今回は楽天グループの事例から、ITに詳しくない方でも理解できる実践的なAI活用法をご紹介します!
小林氏が語るAI戦略から、明日から使えるヒントを抽出しました。難しい用語は極力避けて、「明日から何ができるか」に焦点を当ててお伝えします。
対象の動画はこちらです。
AIは目的ではなく「手段」である
まず押さえておきたいのが、「AIを使うこと自体が目的ではない」ということ。小林氏はこう語っています:
「AIを使うことが目的ではなくて、AIを使ってビジネスを成長させるとか、効率化するとか、お金を稼ぐとか、そういう手段である」
つまり、AIは単なる道具です。重要なのは「その道具で何をするか」です。
例えば「AIチャットボットを導入する」という目標より、「問い合わせ対応の時間を半分に減らす」という目標を立てる方が適切です。AIはその目標を達成するための手段にすぎません。
中小企業でもすぐに真似できる!楽天の実践例
楽天グループでは多くのAI活用事例がありますが、中小企業でも参考にできるものをピックアップしてみました。
1. 画像加工の自動化
商品画像の背景を自動で変更する機能を店舗向けに提供しています。何度も撮影し直さなくても、AIで背景だけを変えられるので撮影コストが大幅削減できるそうです。
- 商品カタログの写真撮影を効率化
- 不動産業なら部屋の内装イメージを簡単に変更
- 季節ごとに背景を変えたSNS投稿を簡単作成
2. 商品説明文の自動生成
キーワードを入力するだけで、商品説明文を自動で作成する機能も提供しています。
- ECサイトの商品説明を短時間で作成
- メルマガやDMの文章作成時間を短縮
- 社内資料や議事録の下書き作成を効率化
3. 顧客問い合わせへの自動返信
顧客からの問い合わせに対して、AIが返信文の下書きを作成することで、返信作業の効率化を実現しています。
- よくある質問への返信テンプレートを自動生成
- お礼メールや確認メールの文面作成を効率化
- 英語など外国語での問い合わせにも素早く対応
驚きの効率化!開発作業で80%の時間削減も
楽天のエンジニアチームでは、AIを活用することで一部の開発作業において工数を80%も削減できたそうです。
- 要件定義書の作成をAIに手伝わせる
- プログラミングの一部をAIに生成させる
- テスト作業を自動化する
小林氏は「1週間かかっていた作業が2時間でできるようになった例もある」と語っています。
- 企画書や提案書の作成をAIに手伝わせる
- Excelの関数やマクロをAIに生成してもらう
- 社内マニュアルの草案をAIに作成してもらう
AIを社内に浸透させるための3つのポイント
楽天グループでは「AIナイゼーション」と呼ばれる全社的なAI活用推進を行っています。その中から中小企業でも実践できる3つのポイントを紹介します。
1. トップのコミットメントを示す
楽天では三木谷社長自ら「No AI, No Future」(AIがなければ未来はない)というメッセージを発信し、月2回のAI専門会議を主催しています。また、毎週の全社朝会でも必ずAIのトピックを取り上げています。
- 経営者自らAIツールを積極的に使ってみる
- 定例会議でAI活用事例を共有する時間を設ける
- 「AIを使いこなすことが会社の競争力になる」というメッセージを発信する
2. 具体的な数値目標を設定する
楽天では「トリプル20」と呼ばれる戦略で、マーケティング、オペレーション、クライアント効率をそれぞれ20%向上させる目標を設定。2024年には105億円の利益をAI活用で創出したそうです。
「トリプル20」とは?楽天に学ぶAI活用の数値目標設定法

楽天グループが推進している「トリプル20」(Triple 20)とは、AIを活用して3つの領域でそれぞれ20%の効率改善を目指す戦略です。楽天グループ常務執行役員の小林悠輔氏によると、この3つの領域とは:
- マーケティング効率の20%向上
- オペレーション効率の20%向上
- クライアント効率の20%向上
特に3つ目の「クライアント効率」とは、楽天の場合、楽天市場の出店店舗や楽天トラベルの施設など、ビジネスパートナーの業務効率を向上させることを指します。
なぜ「20%」なのか?
「なぜ15%や25%ではなく20%なのか」という明確な説明はありませんが、挑戦的でありながらも現実的な目標として設定されたと考えられます。
小林氏は「高い目標を立ててこれに真剣に取り組んでいる」と述べており、達成困難ながらも頑張れば到達可能な”ストレッチゴール”として設定されているようです。
中小企業がトリプル20に学ぶべきポイント
1. 具体的な数値目標を設定する
漠然と「AIで業務を効率化する」ではなく、「20%」という具体的な数値目標があることで、進捗の測定や効果の検証が容易になります。中小企業でも「問い合わせ対応時間を20%削減」「データ入力作業を20%効率化」など、具体的な数値目標を設定するとよいでしょう。
2. 複数の領域で総合的に取り組む
単一の領域だけでなく、「マーケティング」「オペレーション」「クライアント(または取引先との連携)」など複数の領域で同時に効率化を目指すことで、ビジネス全体の底上げが可能になります。
3. 目標達成のロードマップを作る
20%という数字は一気に達成するものではなく、段階的に取り組むべきものです。例えば、初月は5%、3ヶ月後に10%、半年後に15%、1年後に20%といった具体的なロードマップを作成すると良いでしょう。
トリプル20の具体的な成果例
楽天グループでは、この戦略によって2024年に約105億円の利益創出を達成したと報告されています。さらに、2025年にはこの数字を倍の約210億円にする目標を掲げています。
小林氏によると、特に成果が出ている領域として以下が挙げられていました。
- コスト削減: 開発工程の一部で作業時間が1週間から2時間に短縮(約80%削減)
- マーケティング分析: AIを活用して短時間でより効果的な戦略を立案
- 自動化: 人の手を介さずに業務が完結するレベルの自動化を実現中
中小企業向け「ミニ・トリプル20」実践ガイド
大企業の取り組みをそのまま真似することは難しいかもしれませんが、規模を小さくした「ミニ・トリプル20」として実践できます。
【マーケティング効率20%向上】の具体例
- SNS投稿の文章・画像作成をAIで効率化
- メルマガの開封率・クリック率をAI分析で20%向上
- 顧客データ分析の時間を20%削減
【オペレーション効率20%向上】の具体例
- 会議時間・議事録作成時間を20%削減
- 経費精算処理を20%効率化
- 在庫管理・発注業務を20%効率化
【社外連携効率20%向上】の具体例
- 取引先とのメールコミュニケーションを20%効率化
- 見積書・請求書作成を20%効率化
- 顧客からの問い合わせ対応時間を20%削減
効果測定の方法
目標を設定したら、効果を正確に測定することが重要です。
- 時間計測: 業務にかかる時間をAI導入前後で比較
- コスト計算: 人件費や外注費の削減額を算出
- 品質評価: エラー率や顧客満足度などの変化を測定
- 生産性指標: 1人あたりの処理件数など生産性の変化を追跡
小さく始めて大きな効果を
楽天の「トリプル20」戦略から学べる最大のポイントは、AIを活用する際も「具体的な数値目標」を持つことの重要性です。
中小企業では、まずは1つの業務で20%の効率化を目指してみて、成功したらそれを他の業務にも広げていくという段階的なアプローチがおすすめです。
小林氏の言葉にあるように「一度うまくいった成功事例をコピーして使う」ことで、効率的にAI活用を広げていくことができるでしょう。
20%という数字にこだわる必要はありませんが、具体的な数値目標を設定することで、AIの効果を可視化し、全社的な取り組みにつなげていくことができます。
3. 知見の共有と再利用を促進する
楽天では1.6万以上の「カスタムAI」が社員によって作成・共有されています。他部署の優れた事例をすぐに活用できる仕組みが整っているのです。
- 社内チャットやフォルダでAI活用事例を共有する
- 「こんな時はこのプロンプト(AIへの指示文)が使える」というリストを作る
- 月1回の「AI活用事例発表会」のような場を設ける
今すぐ始められる!中小企業のためのAI導入ステップ
「でも、具体的に何から始めればいいの?」という方のために、明日から実践できるステップをご紹介します。
まずは自社で時間がかかっている業務や、単調な繰り返し作業を洗い出しましょう。
- 顧客へのメール返信
- 議事録作成
- データ入力作業
- 画像加工
- 文書作成
最初から有料ツールを導入する必要はありません。まずは無料で使えるAIツールを試してみましょう。
- ChatGPT(無料版): 文章作成、アイデア出し、簡単なデータ分析など
- Microsoft Copilot: Office製品と連携した文書作成支援
- Canva: AIを活用したデザイン作成
- Otter.ai: 会議の音声を自動で文字起こし
最初から大規模な導入は避け、小さな成功体験を積み重ねることが重要です。
- まずは週1回の会議議事録をAIで作成してみる
- 月1回のニュースレターの原稿をAIに手伝ってもらう
- 商品説明の下書きだけAIに任せてみる
AIを使った結果、どれだけ時間が節約できたか、品質が向上したかを測定し、社内で共有しましょう。
- 「AI活用で週に3時間の作業時間削減に成功」
- 「問い合わせ対応が平均15分から5分に短縮」
- 「SNS投稿の engagement率が20%向上」
まとめ:AIは難しいものではなく、便利な「道具」
今回ご紹介した楽天のAI活用事例から、AIは特別な知識がなくても活用できる便利な「道具」だということがお分かりいただけたでしょうか。
小林氏が語るように、理想的なAI活用とは「気づいたら使っている」状態です。難しく考えず、まずは身近な業務効率化から始めてみましょう。
「民主化と言っている通り、事業者だけじゃなくて一般のユーザーさんも含めてAIを使っていただける、利用しているだけじゃなくて自分でも使えるような、そんな環境になっていく」
AIの波に乗り遅れることなく、ぜひ皆さんの会社でも活用を始めてみてください!
参考情報
この記事は、楽天グループ常務執行役員 小林悠輔氏のインタビュー内容をもとに作成しています。楽天グループでは2025年7月30日〜8月1日に「Rakuten AI Optimism」というイベントをパシフィコ横浜で開催予定です。AIに興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか。