AI活用の本質は技術より思考力 〜インターン生に伝えたい4つの視点〜

こんにちは、サンロフト DX事業部部長の中村です。2025年8月26日、AI創造インターンシップ「IDEA-SHIP」の一環として、インターン生10名に向けて「AI活用のための思考力を養う」と題した講座を行いました。
参加いただいた学生の皆さんありがとうございました!
参加できなかった方に向けて、AI時代に必要な思考法について、ビジネスの現場から見た視点をお伝えできればと思います。
講座の目的:AI時代を生き抜く思考力
今回の講座の目的は、AI時代に必要な思考力の基礎と実践的な知識を学んでもらうことでした。学生の皆さんは既に学校でAIを使っていますが、職場でAIを活用する際にはまた異なるアプローチが必要です。
特に重視したのは以下の点です。
- 技術ではなく「ユーザー体験」を優先する思考法
- AIと人間が協働して問題解決する方法
- 実務に即したAI活用のポイント

BuddieS(バディーズ)のご紹介
講座の導入として、当社のAI活用製品「BuddieS(バディーズ)」についてデモを交えながら紹介しました。BuddieS(バディーズ)は中小企業向けのAI活用ツールで、議事録作成(1時間→3分)やメール作成(10分→1分)などの業務効率化を実現するサービスです。


特に強調したのは、単なるチャットボット型のAI対話ではなく、「日頃の業務で使えそうな機能をタイル型に配置し、必要な機能をすぐに選べる」設計にしたことです。これは「ChatGPTやClaudeを使おうとすると、枠があって何を入力すれば業務効率化するのかわからない」というユーザーの声に応えたものです。

AI時代に必要な4つの思考軸
講座のメインとして、AI時代に必要な4つの思考軸についてお話ししました。
1. ユーザー理解


AIというと技術が先行しがちですが、最も重要なのは「誰が使うのか」「どんな業務を助けるのか」というユーザー理解です。BuddieS(バディーズ)開発時も、ユーザーの「何を入力すれば業務効率化できるかわからない」「AIの回答が信用できない」という声を直接聞き取り、製品設計に反映しました。
また「AIは私たちのことをほとんど知らない状態でチャットが始まるので、急に最適なものを返してくれることは基本的にない」というAIの限界を理解し、それを補う設計が必要だということも強調しました。
2. 業務改善事項


AIが効果を発揮する業務として「定型的で繰り返しの多い作業」「大量のデータ処理が必要な業務」「判定が求められるもの」などを挙げ、実際の業務改善手法として3ステップの方法を紹介しました。
- 業務フロー(工程)を細かく洗い出す
- 洗い出した中からAIで解決できそうな部分を特定する
- 特定した部分を深掘りして具体的な改善策を考える
具体例として、当社のウェブサイト制作の営業プロセスを細分化し、どの部分がAI化できるかを示しました。特に「議事録作成」の効率化事例は学生さんの関心を引いたようです。

3. スピード思考


AI技術は日々進化しているため、「プロトタイプを作って、検証して、改善するというサイクルをスピード感を持って回していく」ことの重要性を説きました。ChatGPTの各バージョンの変化なども例に挙げながら、技術の急速な変化に対応するためには「考えるだけでなく行動し、フィードバックを早く得る」ことの価値を強調しました。
「スモールスタート戦略」として、小さく始めて仮説検証を繰り返すアプローチを推奨し、完璧を目指すよりも早期に形にして改善していく姿勢の重要性をお伝えしました。
4. チームワーク


最後に「多様な視点を活かす」ことの重要性を説明しました。
- 営業:顧客ニーズや市場性の視点
- エンジニア:技術的実現可能性の視点
- デザイナー:ユーザー体験の視点
これらの異なる専門性を持つメンバーが協力することで、より価値の高いプロダクトが生まれることを強調しました。また、「役割が違うのでぶつかることもあるが、それは悪いことではなく、建設的な衝突から新しい価値が生まれる」というポイントも共有しました。
BuddieS(バディーズ)開発事例から学ぶ実践知


講座の中で最も学生の反応が良かったのは、BuddieS(バディーズ)開発時のエピソード、特にエンジニアとの衝突の事例でした。
当初、エンジニアにスクラッチで開発してもらったものの、最終的にはノーコード・ローコードツールのDifyを使ってサービスをリリースした経緯を率直に語りました。この決断は「開発者が頑張って作ったものを一切使わない」という厳しいものでしたが、「AI時代は技術が急速に進化するため、自社開発では時間がかかりすぎる」という判断からでした。
この衝突を通じて「営業はお客さんのために早期解決を求め、開発メンバーは安定性や品質も考慮している」という立場の違いを理解し合うことができました。スクラッチ開発とノーコード開発のトレードオフについても解説し、状況に応じた選択の重要性を強調しました。
ブレインストーミングの効果的な方法
インターンシップの課題に向けて、3つのブレインストーミング手法を紹介しました。
付箋を使ったブレスト



批判禁止、固定概念を捨て、小さなアイデアも歓迎。
出てきたアイデアを「実現可能性×効果/インパクト」の軸でマッピングし、優先順位をつける方法も紹介。
AIとのブレスト

AIとの対話で深掘り質問やアイデア提案を引き出す
録音ベースのブレスト

会話を録音してAIに自動整理してもらう
特に録音ベースのブレストでは実際の録音例を聞かせ、一見無秩序な会話もAIが整理すると具体的なアイデアとして抽出されることを実演しました。
学生たちの反応と質疑応答
講座の最後には質疑応答の時間を設け、学生たちから鋭い質問がいくつか出ました。
デザイナー志望の学生からは「自分の感性だけでなく、お客様のことを考えるためにはどうすればよいか」という質問があり、「自分の感性を育てることも大切だが、他者の視点も取り入れることでさらに成長できる」とアドバイスしました。
また、「ユーザーニーズをどう把握するか」という質問には、「可能ならユーザーになって実践してみること」や「くどいくらいお客様に質問し、反応を良くして相手が話しやすい環境を作る」などのテクニックを紹介しました。
特に印象的だったのは、エンジニアとの衝突事例に対する学生の反応です。「相手が大事にしていることを理解することの重要性が伝わってきた」という感想をもらい、建設的な衝突の価値と難しさについて深く語ることができました。
今後への期待


講座の締めくくりとして、「パステルIT新聞サイトのAIを活用したリニューアル提案」という今後の課題について触れ、「サイトを使う人を深く想像して考察すること」の重要性を強調しました。
特に嬉しかったのは、「このインターンシップは架空の演習ではなく、皆さんが考えたものが実際にサイトに反映される可能性がある」と伝えたときの学生たちの反応です。「これ実は僕が発案したものなんだよね」と自慢できるような成果物を作り出してほしいという期待を伝えました。
また、「業界ではどうしても固定概念が入ってしまう」なか、学生ならではの自由な発想に期待していることも伝えました。サンロフトの社内では考えられないような斬新なアイデアが生まれることを楽しみにしています。
まとめ:AI時代の思考力とは
今回の講座を通じて、AI時代に必要な思考力として特に以下の点を強調しました。
- 技術ではなく「誰の何を解決するか」というユーザー体験を最優先する
- 業務を細分化し、AI活用可能な部分を特定する
- 完璧を目指すより早くリリースして改善するスピード志向
- 多様な専門性を持つメンバーの協働と建設的な衝突の活用
これらの思考軸は、単なる技術的なAI活用を超えて、真に価値のあるAIソリューションを生み出すための基盤となるものです。
インターン生の皆さんには、これらの思考法を活かして、ぜひ素晴らしい提案を作り上げていただきたいと思います。そして、このインターンシップでの経験が、皆さんの将来のキャリアにおいても役立つことを願っています。
※本記事で使用している画像は、2025年8月26日に行われたAI創造インターンシップ「IDEA-SHIP」講座の投影資料から抜粋したものです。