中小企業の生成AI活用実態調査:57.7%が導入済み、課題と成功要因は?【静岡中部】

AIの普及が加速する中、中小企業における生成AIの活用はどこまで進んでいるのでしょうか。
サンロフトでは、静岡県中部エリアの中小企業を対象に、生成AIの利用実態に関する調査を実施しました。
調査概要
- 調査期間: 2025年4~5月
- 調査方法: セミナー参加者アンケート調査
- 調査対象: 静岡県中部エリアの中小企業(複数回の生成AI活用セミナー参加者)
- 有効回答数: 52名
- 回答率: 94.5%
- 調査実施者: 株式会社サンロフト
調査の特性と信頼性について
本調査は、当社が登壇している生成AI活用セミナーの参加者を対象に実施したアンケート調査を集計・分析したものです。回答率94.5%という高い数値は、参加者の皆様のご協力により実現したものです。ただし、調査対象が「セミナー参加者」であるため、AI活用に関心の高い層が多く含まれています。したがって、一般的な中小企業全体の平均よりも活用が進んでいる可能性があることをあらかじめお断りしておきます。むしろ「AI活用に関心を持った企業の実態」として参考にしていただければと思います。
なぜこの調査を実施したのか。それは、「中小企業のAI活用の現状を正確に把握し、真に必要な支援を提供したい」という想いからです。大企業の事例は数多く報告されていますが、リソースや専門知識が限られる中小企業の実態はまだ十分に明らかになっていません。
今回の調査結果から見えてきたのは、AI活用に関心を持った企業でさえ抱えている課題と、それでも着実に進む活用状況でした。
セミナー内容
こちらの記事で紹介しています。

調査結果のポイント
セミナー参加者でも57.7%が利用、意外に高い未活用率

調査対象がセミナー参加者であることを考慮すると、全体の57.7%が既に生成AIを利用しているという結果は、決して「想像以上に高い」とは言えないかもしれません。むしろ、AI活用に関心を持ってセミナーに参加した企業でさえ、4割以上がまだ活用していないという事実の方が注目に値します。
特に注目すべきは年代別の格差です。
- 20代:84.6%が利用中
- 30代:53.8%が利用中
- 40代:58.3%が利用中
- 50代以上:46.7%が利用中
20代と50代以上で約40ポイントの差があり、デジタルネイティブ世代とそれ以外の世代で明確な活用格差が生まれていることが分かります。
認知度は高いものの、深い理解は不足

生成AIの認知度については以下のとおりとなりました。
- 聞いたことがある:38.5%
- メリット・リスクをある程度理解:53.8%
- メリット・リスクを十分理解:わずか7.7%
9割以上が生成AIを認知しているものの、十分に理解している人は1割未満という結果に。「知っているけれど、よく分からない」状態の企業が多いことが浮き彫りになりました。
利用実態:何に使っているのか?
文書作成が圧倒的、創造的業務での活用が進む

利用者30名の用途を見ると以下のとおりです。
- 文書作成(企画書、報告書等):80.0%
- アイデア出し・ブレインストーミング:73.3%
- 情報収集・整理:60.0%
- 個人的な活用:20.0%
- データ分析:10.0%
興味深いのは、単純な文書作成だけでなく、創造的な業務(アイデア出し)で73.3%が活用していることです。これは、AIを「作業効率化ツール」としてだけでなく、「思考のパートナー」として捉えている企業が多いことを示しています。
ChatGPTが圧倒的シェア、利用頻度は二極化

使用ツールについては以下のとおり。
- ChatGPT:83.3%
- Microsoft Copilot:36.7%
- Google Gemini:23.3%
- Claude:6.7%
ChatGPTの圧倒的な認知度とアクセシビリティが影響していると考えられます。

利用頻度は興味深い結果に。
- ほぼ毎日:20.0%
- 週に数回:30.0%
- 月に数回:23.3%
- ごくたまに:26.7%
半数が週1回以上利用している一方で、残り半数は月数回程度と、利用頻度に大きな差があることが分かります。
効果:90%が業務効率化を実感

最も注目すべきは効果に関する結果です。
- 大幅に向上した:20.0%
- ある程度向上した:70.0%
- あまり変わらない:6.7%
- かえって非効率:0.0%
実に90%の利用者が業務効率の向上を実感しており、「使ってみたけれど効果がない」という企業はほとんどありませんでした。これは、生成AIの実用性の高さを示す重要な結果です。
未利用企業の本音:63.6%は「使いたい」

現在利用していない企業(22名)の今後の意向です。
- 今後は使いたい:63.6%
- 使うつもりはない:4.5%
- わからない:31.8%
興味深いのは、使うつもりがないとしている企業は5%未満で、多くは「使いたいけれど踏み切れない」状態にあることです。
最大の課題:セキュリティと信頼性への不安

全回答者52名に業務利用における不安を聞いたところ、セキュリティと信頼性への懸念が上位を占める結果となりました。
- 機密情報・個人情報の漏洩:50.0%
- アウトプット情報の正確性・信頼性:46.2%
- AIへの依存リスク:44.2%
- 著作権・ライセンスの問題:40.4%
- 個人のスキル差による利用格差:32.7%
これらの不安は決して杞憂ではなく、適切な対策なしにAIを導入することのリスクを示しています。
企業の本音:「ルールを整備して活用したい」

今後の業務利用に対する考えでは、約9割が何らかの形でAI活用を前向きに捉えている一方で、「慎重な活用」を求める声が圧倒的でした。
- ルールを整備して慎重に活用:63.5%
- 積極的に活用すべき:25.0%
- わからない:9.6%
- 使用すべきではない:1.9%
圧倒的ニーズ:ルール策定と教育研修


特に注目すべきは以下の結果です。
利用ルール・ガイドラインの必要性:90.4%が必要と回答
- あった方が良いが厳しすぎは不要:32.7%
- 必要だが内容は慎重に検討:32.7%
- 必要であり早急に策定すべき:25.0%
研修・教育への参加意向:94.2%が参加希望
この結果は衝撃的でした。9割以上の企業がルール策定と教育研修を求めているのです。これは、多くの企業が「AIを活用したいが、どう使えば安全で効果的なのか分からない」状態にあることを示しています。
データから見える3つの重要な示唆
1. 「AI格差」が既に発生している
20代と50代以上で40ポイントの利用率格差があり、利用頻度も二極化しています。この格差は今後さらに拡大し、世代間・企業間の競争力格差につながる可能性があります。
2. 「安全な活用方法」への強いニーズ
セキュリティへの懸念と、9割以上がルール策定を求めている事実は、AI活用に関心の高い企業でさえ「活用したいが、リスクが怖い」状態にあることを示しています。適切なガイドラインと教育があれば、活用が一気に進む可能性があります。
3. 関心の高い層でも活用は道半ば
セミナー参加者という関心の高い層でも活用率は6割弱であり、一般的な中小企業全体では活用率はさらに低い可能性があります。これは、関心があっても実際の導入には大きなハードルがあることを示しています。
中小企業がAI活用で成功するための5つのポイント
今回の調査結果を踏まえ、中小企業がAI活用で成功するためのポイントをまとめました。
1. 小さく始める
いきなり大規模導入ではなく、文書作成やアイデア出しなど、リスクの低い業務から始める
2. ルールを先に作る
利用前に「何に使うか」「何に使わないか」「どんなデータは入力しないか」を明確にする
3. 世代を超えた教育体制
若手の知識と経験者の判断力を組み合わせ、全世代が活用できる環境を作る
4. 継続的な学習
AIは急速に進化するため、定期的な情報更新と研修が必要
5. 効果測定を忘れない
何のためにAIを使うのか、どんな効果があったかを継続的に測定する
まとめ:「関心はあるが踏み出せない」企業が多数
今回の調査で最も印象的だったのは、AI活用に関心を持ってセミナーに参加した企業でさえ、4割以上がまだ活用に踏み切れていないことです。
これは、一般的な中小企業全体で見れば、活用率はさらに低い可能性を示唆しています。多くの企業が「AIを使ってみたいが、何から始めればよいか分からない」「リスクが心配で踏み出せない」状態にあると考えられます。
重要なのは、調査結果が示すように、実際に使ってみた企業の90%が効果を実感していることです。完璧を求めず、適切なルールと教育体制を整えた上で、小さく始めることが成功の鍵となります。
ただし、闇雲に始めるのではなく、適切なルールと教育体制を整えた上で、段階的に活用を進めることが成功の鍵となります。
AI活用は「いつか取り組む課題」ではなく、「今すぐ始めるべき現実的な手段」になっています。しかし、関心の高い企業でさえ半数近くが踏み出せていない現実を踏まえると、まずは不安や疑問を解消し、安全で効果的な活用方法を学ぶことから始めることが、これからの中小企業の競争力向上にとって不可欠と言えるでしょう。
本調査は2025年4~5月に実施され、静岡県中部エリアの中小企業を対象とした複数回の生成AI活用セミナーにおいて、参加者52名の方々にご協力いただきました(回答率94.5%)。AI活用の現状把握と、より良い支援策の検討を目的として継続的に実施しています。